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2023.09.04

「どや顔」しない設計

建築エコノミスト森山高至氏の著書「非常識な建築業界〜「どや建築」という病〜」を読みました。タイトルだけで共感したので気になって読みました。

 

 

「どや建築」とは関西弁で「どや?」という得意げな顔をした建築のことで、周辺の街並みや空気を読まず、使用者の便益すら無視した、自称建築家の自己表現に走った建築を言う著者の造語です。

 

建築家の中二病みたいなものかなと思いました。「中二病」というのもまた造語で、伊集院光氏がラジオで使ったとされています。多感な中学二年生の時期に特有のちょっとイタイ自己陶酔みたいな感じですね。まあ例えですけど。

 

なぜこの「『どや建築』という病」に反応したかと言えば、ここ数年、自分なりに設計として家という建築に対してひとつの態度を取るに至ったからです。それは「汎用性」。つまり突飛なことはしないというスタンスで設計することを心がけているのですが、言い換えると「どや建築」を避けることになるのかなと。

 

家って皆さん、住宅ローンを組んで建てますよね。中古を買う場合もそうです。始めから住みかえるつもりだったり投資用の不動産を除き、できるだけ長く建ってて欲しいですよね。30年ローンで建てて30年で取り壊すんじゃ大変です。できることなら50年、60年耐えて欲しい。長期優良住宅認定制度だと90年くらいの想定。そういう場合、次に住む人がいるわけです。自分の子供かもしれない、まったく知らない赤の他人かもしれない。

 

でも新築住宅の間取りを計画するときに、何十年か先の自分以外の住人のコトを考えることが出来る人がどれほどいるでしょうか。きっと無理だと思います。だからこそ我々建築の専門職がいると考えます。私が今まで触れてきた古今東西今昔の建物、それが作られた文脈、そういうものをぼんやり眺めて見えた”普通”が、結局色んな人が使いやすいんじゃないかなーと。

 

なので、私は一番初めに設計案を考えるとき、オンリーワンのカスタム住宅ではなく、みんなが使いやすい間取り、建物の形を提案するようにしています。できるだけ「よく見る」ありきたりな間取りにし、屋根も普通の三角屋根です。窓も今はやりのはめ殺しまどを多用した間取りにはしません。ボックス型の庇のないデザインではなくしっかり庇を出します。先の著書から引用すれば「長い時間をかけて普遍性に到達した建築的要素」です。でもそれって言ってしまえば没個性的ですよね。家が建って「あの家をデザインした設計者は誰だ!?」とは絶対ならない。でも住む人が使いやすくて、ゆくゆくは別の人が住んでもそう思ってくれる。愛着の湧く家、そういう家がいい家だと思って設計しています。

 

竪穴式住居から近代住宅に至るまで、戸建て住宅が培ってきた「普遍性」は「アノニマスデザイン」とも言えると思います。デザイナー不明の名デザイン。雨を受け流し台風に耐える屋根、風を入れる窓。これらはすでに徹底的に洗練されたアノニマスデザインだと思うのです。

 

やたらと外観の格好良さや断熱性能だけにこだわる人もいますが、今一度、この先人たちが気づいてきた”デザイン”に思いをはせてもいいじゃないかと思い、今日の記事を締めくくらせて頂きます。

 

あ、もちろん、住宅は個人がお金を出して建てますので、格好良くしたい要望があれば応えますし、「突飛」と「普通」のボーダーラインも個人的主観だとわきまえているつもりです。建て主様のご要望には、職業としてできるだけお応えします。普通の間取りしか書かない設計者ではありませんのでご安心下さい(^^;

 

アノニマスデザインと言えば、のビアレッティのエスプレッソメーカーが欲しい今日この頃、設計の上村でした。

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