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2019.12.06

和の住まいとは何か



設計課の山下です。
 
先々月になりますが、「和の住まい推進の取り組みについて」のシンポジウムがあり、それに参加しましたので、今日はその時に感じた事をご報告したいと思います。
主催は「鹿児島県木造住宅推進協議会」と「一般社団法人木を活かす建築推進協議会」でした。
国土交通省や林野庁、観光庁の担当者も見えていましたので、その趣旨はおそらく、木材をたくさん使う和の住まいを推進することで、日本の木材資源の活性化を高めることにあるのだろうと思いました。これはもちろん重要な事でありますので、あらためて現代における「和の住まい」とは何かを考えさせられる良い機会となりました。
 
 「和の住まい」を考えるうえで、私が特に刺激を受けたのは基調講演をされた建築家の松島潤平さんの『和の「風」を捉える』でした。松島氏は日本の和の住まい、すなわち「和様」の成り立ちを古代の日本の歴史環境をふまえて話されました。
松島氏の話を要約すると「唐様」に代表される中国の影響を受けていた古代日本は、当初ある意味、中国という中心部から外れた意味を持つ(異論もあります)、多少マイナスイメージの「倭」という漢字で記述されていたそうです。確かに「漢の倭の那の国王」の金印であったり、朝鮮から見れば「倭寇」の意味で海賊だったりしました。そして、中華文明を中心とする周辺国であった、その「倭」の国が、中国文化を吸収し咀嚼する中で、日本的に発展した結果、奈良時代中期ごろになると「倭」の文字で表記されていたのが「和」や「日本国」の文字で自国を表記するようになり、いわゆる「和様」が確立されていったそうです。
 
それではこの「和様」とは何なのでしょうか。
 
 建築で和様を表現しようとすると、それは素材としての木材の露出であったり、障子や畳の使用が多くなります。確かにこれらの素材のぬくもりは、無条件に日本人の心を落ち着かせますが、しかし、設計者としては、この様なただ機械的、パターン化した素材使用のみによる「和様」の表現は、いかがなものかと思います。
 
それでは「唐様」と違う「和様」の本質はどこにあるのでしょうか。
 以下は私がこのシンポジウムに参加し、松島氏の講演を聞いて感じた独断的率直な結論ですが、それは「現実存在」としてある、日本の環境と、中国や大陸の環境の相違をすなおに見るところにその本質が理解できるのだろうという事です。
 
すなわち日本は、4周を海に囲まれ、四季の移り変わりのある、夏は高温多湿、冬はそれなりに寒く乾燥した環境があります。片や中国は、どこまでも陸続きで周囲に蛮族が多く、乾燥した砂漠もあれば、熱帯雨林に近い環境も有る複雑な環境です。
このように考えれば、主として海洋性の温帯に属し、海に囲まれ、比較的周辺諸国の圧迫の低い日本の住まいの主たる素材は、石ではなく繊細な木や紙であり、「環境に開かれた家」であったろう事は容易に想像できます。
この周囲に開放された自然や、周りの人々と共生するのが「和様」の本質であるのではないでしょうか。そして「開かれたた空間」の象徴として、日本住宅の「縁側」に代表される、自然と融合する「なごみ」の空間があったのです。この「なごみ」という言葉は漢字で書くと「和み」と書け、「和」として日本人のDNAに刻まれていったのでしょう。
それに比べ、大陸の住居は多くは外敵から身を守るシェルターであり、シェルターであるがゆえに、「閉ざされた空間の家」つくりが基本であったろうと思います。
 
さらに、松島氏の講演の中に、もう一つの印象ある言葉がありました。それは、現代日本の家に古来から引きつがれた「開かれた空間」と、新しく要求される「閉ざされた空間」の融合が必要であると言われたのです。
すなわち、閉ざされつつ開くが、現代「和の住宅」に必要であり、それに使われる素材は、場合と目的によっては自然素材のみでなく「フェイク素材」の使用も可であるという、多少、衝撃的な「フェイク」という言葉でした。開くと閉じるは矛盾する概念ですので、松島氏の言葉をどのように理解すればよいのでしょうか。
 
これも以下に、文責「山下」で自由に解釈すれば、以下のようになるのではないでしょうか。
 
現代日本における、環境は古代に比べ変化してきています。
 現代日本における外敵は、自然のもたらす猛威であり、地震や台風、暑さ寒さをも含めたエネルギー問題です。すなわち「閉じた空間」は、外敵たる自然エネルギーから身を守る基本的な「家」つくりの手法です。松島氏はこのような意味において、あくまで「和様」の本質は開かれた空間にあるとしつつ、この矛盾する概念をいかに同一するかが必要であると言われたのです。
 
木に似せた「フェイク」のアルミ素材の使用も、この「閉じた空間」と「開かれた空間」との融合に必要ならば使っても良いのです。「純日本風の家」も地震や台風で壊れたり、冬の寒さに震えていては仕方がありません。自然素材の優れた特徴を現代の科学技術で使いこなす事が「フェイク素材」の真意であるのではないでしょうか。
 
 現代に適合する「開かれて閉じている空間」の、なごみを好む現代日本の実在に沿った創造こそが、今様の「和様の家」なのではないかと思う事でした。
 
 松島先生は「フェイク素材」という私にとって衝撃的言葉を使われましたが、先生の真意は、日本人の「和み」のDNAの存在が消失しないうちに、現代日本にマッチする真の意味で開かれた「和様の家」つくりの確立にあるのではないかと思う事でした。
 
そして、日本の林業の振興に関しても、すでに大型の公共建築物に木と金属の融合した木材使用量も多い、ハイブリッドな建築物が出現しています。松島先生の師匠であった、隈研吾氏による、オリンピックのメーンスタジアムである国立競技場も和の伝統をたもちつつ先日完成しました。
 
LVL(単板積層材)の開発や、特にCLT(直交集成材)などの開発は、「現代におけるコンクリート」とも呼ばれ、木造でも高層建物の建築を可能にしています。
素敵な「和様」のDNAのある日本の住宅において、一般木造住宅に関しても、このような素材の使用は避けて通れない一つの選択肢になるのではないでしょうか。
 
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